痛み止め(NSAIDs)には排卵を抑制する作用がある

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痛み止め(NSAIDs)には排卵抑制作用がある


人間の身体は、痛みや炎症が起こると、シクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase: COX)が血管内皮細胞や血管平滑筋細胞等に速やかに誘導され、痛み物質であるプロスタグランジンなどが産生されます。

この痛み物質であるプロスタグランジンの合成を阻害することによって、鎮痛作用、抗炎症作用、解熱作用をもたらすのが、鎮痛剤の非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)です。

プロスタグランジンは卵胞に作用しLHの排卵誘起に関与します。

そのため、プロスタグランジン産生を阻害する非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の作用が排卵を抑制させることが知られています。

高度生殖医療を受けている方は、採卵前にロキソニンやボルタレンが処方されている方も多いと思います。

ロキソニンやボルタレンなどの痛み止め非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)はこのような排卵抑制作用があるからです。

タイミング法など妊活中の方で、痛み止め常用している方は気を付けた方がよいかもしれません。

排卵痛があるときは、アセトアミノフェン(カロナール)など排卵を抑制しない薬を選ぶと良いでしょう。

非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の一般的な商品名は、こちら↓

主な鎮痛剤非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の一覧

一般名商品名
アセチルサリチル酸アスピリンアスピリン、バファリン
ジクロフェナクボルタレン
インドメタシンインダシン、インテバン
フェルビナクフェルビナク
イブプロフェンブルフェン
ナプロキセンナイキサン
ロキソプロフェンナトリウムロキソニン
メロキシカムモービック
ロルノキシカムロルカム
塩酸チアラミドソランタール
セレコキシブセレコックス、セレブレックス
    非ステロイド性抗炎症薬 NSAIDs

非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)と排卵抑制の関連を調べた論文


今回は非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)と排卵抑制の関係を調べた論文を紹介します。

卵胞期後期に投与されたメロキシカムが女性の排卵に及ぼす影響を評価した論文です。

18~40歳の22名の健康な女性に参加してもらい、主席卵胞の平均直径が18mm以上になった時点から、メロキシカムを15mgまたは30mg、5日間毎日経口投与しました。

15mg/日を投与した女性の11/22(50%)サイクルで排卵が起こったが、30mg/日を投与した女性は2/22(9%)サイクルでしか排卵しなかった。この差は統計的に有意であった。

30㎎群10/22(45.5%)、15㎎群5/22(23.0%)のサイクルで未破裂卵胞が観察された。

メロキシカムをLHピーク開始前に投与した場合、排卵した割合は15㎎群で6/11(54%)、30㎎群で0/14(0%)。

機能不全排卵が認められた割合は、15mg/日で5/11(46%)、30mg/日投与で14/14(100%)。

一方でメロキシカムをLHピーク後に投与した場合、排卵した割合は15㎎群で5/11(46%)、30㎎群で2/8(25%)。

機能不全排卵が認められたの割合は、15㎎群6/11(54%)、30㎎群6/8(75%)。

結果、このパイロット試験から、卵胞期後期にメロキシカムを投与すると、卵胞破裂が妨げられたり、排卵障害が生じたりして、排卵プロセスが阻害されることが確認されました。

未破裂卵胞は、30㎎群では15㎎群よりも高い割合で観察されたが(それぞれ45.5%対23%)、6日間の観察期間中の未破裂卵胞は、次の月経時までにすべて破裂していた。

COX-2阻害剤であるメロキシカムは、LHサージの開始後に投与しても、卵胞破裂を防止または遅延させることができるという結論を支持するものである。
Suppression of follicular rupture with meloxicam, a cyclooxygenase-2 inhibitor: potential for emergency contraception. Human reproduction (Oxford, England). 2010 Feb;25(2);368-73



メロキシカムの長期投与が排卵および月経周期に及ぼす影響を評価した。

56名の健康な女性を対象に行われました。

参加者は、連続した3サイクルの間に18日間治療を受けました。(月経周期5日目から22日目までメロキシカムの投与)

参加者は15mg/日または30mg/日が無作為に割り付けられた。

月経周期は連続超音波検査と血液中のホルモン測定でモニターされた。

15mg/日を投与した周期の55%、30mg/日を投与した周期の78%で、排卵障害が観察された。

排卵は,15㎎群4.6%,30㎎群21.7%に認められた。

結果、月経周期5~22日目にメロキシカムを投与すると、用量依存的に排卵が抑制されたが、最高用量30㎎では20%以上の参加者が正常な排卵を示した。

1日30mgの高用量でも20%以上の被験者に排卵が起こることから、このアプローチは高い避妊効果になるとは考えられない。と述べています。
Effect of oral administration of a continuous 18 day regimen of meloxicam on ovulation: experience of a randomized controlled trial. Contraception. 2014 Aug;90(2);168-73. 

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