人工受精における多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と肥満の関係
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、妊娠可能な年齢の女性に多く診断される内分泌疾患で、PCOSの症状としては、排卵障害、高アンドロゲン血症、多嚢胞性卵巣形態が挙げられます。
こちらの研究は、中国江蘇省の生殖医学臨床センターにおいて、2008年1月から2019年3月の間に、排卵誘発剤を使用した子宮内人工受精(IUI)を受ける多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)患者において、肥満度(BMI)の影響を評価しました。
子宮卵管造影検査または精液分析の結果が正常である患者、PCOSの診断、タイミング療法で卵巣刺激を3~6周期併用しても妊娠しなかったPCOS患者が対象として選ばれた。
年齢中央値は28歳(21~37歳)で、35歳以上の参加者は831組中58組(7.0%)であった。
卵巣刺激は月経周期の3日目から5日目の間に開始した。
薬剤はクロミフェンクエン酸塩(CC)、レトロゾール(LE)、ヒト閉経後ゴナドトロピン(hMG)、またはhMG+CCまたはhMG+LEを用いた。
投与量は、BMI、卵胞数、および患者の前回の反応(該当する場合)に基づいて決定された。
主席卵胞が18mm以上あれば、hCGまたはGnRH-aでトリガーし子宮内IUI人工授精(IUI)を実施した。
その後2週間の黄体サポートとして200mgプロゲステロンカプセルを内服した。
結果、臨床的妊娠率(CPR)は、1周期あたり831件中188件(22.6%)
1カップルあたり451件中188件(41.7%)
188件中20件(10.6%)流産
188件中2件(1.1%)子宮外妊娠
成功した妊娠のうち、186例中184例(98.9%)が単胎、186例中2例(1.1%)が双胎。
BMIが18.4kg/m2以下(831人中17人、2.0%)
標準体重患者はBMIが18.5〜23.9kg/m2(831人中299人、36.0%)
過体重患者はBMIが24.0〜27.9kg/m2(831人中321人、38.6%)
肥満患者はBMIが28kg/m2以上(831人中194人、23.3%)であった。
正常体重群と比較して、肥満群および過体重群では、hMGの投与量が有意に多く、排卵誘発剤の使用期間も長かった。
BMI群の違いによる臨床妊娠率、流産率、子宮外妊娠率、生児出産率、多胎妊娠率、分娩方法に有意差はなかった。
各周期の妊娠率は、1周期目の臨床的妊娠率(CPR)は188人中111人(59.0%)、2周期目188人中45人(23.9%)、3周期目19人(10.1%)、4周期目11人(5.9%)であった。
hMG群、CC+hMG群、LE+hMG群の臨床的妊娠率(CPR)と生児出生率(LBR)は、CC群とLE群に比べて有意に高かった。
不妊期間、子宮内膜の厚さ、主席卵胞数、子宮内膜組織の種類については、妊娠群と非妊娠群の間に有意な差はなかった。
今回の研究で、過体重群と肥満群のhMG投与量とCOSの日数が正常群よりも多かったことから、肥満はゴナドトロピンに対する卵巣の反応性が低い可能性がある。と締めています。
Predictors of pregnancy after intrauterine insemination in women with polycystic ovary syndrome.The Journal of international medical research. 2021 May;49(5)